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銀木犀の香る寝屋であなたと
第6章 再生
「ただいま、ナカさん」
「お帰りなさいませ」
「キヨさんと吉弘の様子はどう?」
「ええ、なかなか良いお加減ですよ。止まっていたお乳もまた良く出ましたし、わたしの粥を良く召し上がりました」
「そう。よかったわ。あのね、今日、仕事が見つかったのよ。これでもう少し暮らしぶりが良くなると思うわ」
「まあ、まあ……。奥様が……」
「泣かないでナカさん……」
藤井家では冷たそうな、つっけんどんな老女に見えていたメイドのナカは、実際は面倒見の良い温かい人柄で、キヨにも吉弘にも行き届いた世話をしている。
珠子の今の状況も彼女にとって不憫でならないようで、たまにこうやって涙を流すのだった。
「キヨさん、いかが?」
「あ、たま、こおく、さ、あま。おかえ、りなさ、ぃ」
「お乳、いっぱいでたんですってね。よかったわ」
「あ、い。あり、がとおご、ざひ、ます」
キヨは少しまだ言葉にマヒが残ってはいるが、体力は元々あるようなので随分と回復してきた。
吉弘が畳の上をハイハイしている。
「まあっ、吉弘の元気なこと」
「あっー!あっー!うーうまあ」
キヨはひきつれた顔を綻ばせて吉弘を見る。珠子はキヨの母親としての表情をみながら、この家族は私の家族なのだと実感した。
「お帰りなさいませ」
「キヨさんと吉弘の様子はどう?」
「ええ、なかなか良いお加減ですよ。止まっていたお乳もまた良く出ましたし、わたしの粥を良く召し上がりました」
「そう。よかったわ。あのね、今日、仕事が見つかったのよ。これでもう少し暮らしぶりが良くなると思うわ」
「まあ、まあ……。奥様が……」
「泣かないでナカさん……」
藤井家では冷たそうな、つっけんどんな老女に見えていたメイドのナカは、実際は面倒見の良い温かい人柄で、キヨにも吉弘にも行き届いた世話をしている。
珠子の今の状況も彼女にとって不憫でならないようで、たまにこうやって涙を流すのだった。
「キヨさん、いかが?」
「あ、たま、こおく、さ、あま。おかえ、りなさ、ぃ」
「お乳、いっぱいでたんですってね。よかったわ」
「あ、い。あり、がとおご、ざひ、ます」
キヨは少しまだ言葉にマヒが残ってはいるが、体力は元々あるようなので随分と回復してきた。
吉弘が畳の上をハイハイしている。
「まあっ、吉弘の元気なこと」
「あっー!あっー!うーうまあ」
キヨはひきつれた顔を綻ばせて吉弘を見る。珠子はキヨの母親としての表情をみながら、この家族は私の家族なのだと実感した。