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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
「あの……。さきほどシスターをおみかけしましたが、ご家族はいらっしゃらないのですか?」
「シスターヨウコのことかな。彼女はご主人を失くして息子さんと暮らしてたのだが、息子さんも戦争に行ってしまってネ。
終戦後にやっとこの教会を再開できたときに尋ねてこられて、シスターとして神に仕えることにしたのですヨ。
元々敬虔な信者さんだったし、ご主人がなくなった時にはもう神に仕えたいと思っていたようだが……」
「そうなんですね。息子さんも帰らないのですか」
「いや、それが最近無事がわかってネ。来週には戻ってくるそうですヨ」
一樹が生きて帰ってくる。それだけで珠子の心に光明が差す気がした。
会えなくてもいい。しかし、一目見たいと思った。
「シスターは毎日いらっしゃるのですか?お住まいはどこなのです?」
珠子の質問に神父は不思議そうな顔をしたが「彼女は戦災孤児を面倒見ている『友の家』に住んでいます。毎日夕方にここで祈って帰りマスヨ」と答えた。
「そうですか。どうもありがとうございました」
立ち上がり礼をのべ珠子は教会を出た。空を見上げると真上に月が上っていてあたりを明るく照らしている。
今日は多くの出来事があった。疲労困憊の身体と心を引きずりながら、珠子は誰もいない空っぽの家に帰ることにした。
「シスターヨウコのことかな。彼女はご主人を失くして息子さんと暮らしてたのだが、息子さんも戦争に行ってしまってネ。
終戦後にやっとこの教会を再開できたときに尋ねてこられて、シスターとして神に仕えることにしたのですヨ。
元々敬虔な信者さんだったし、ご主人がなくなった時にはもう神に仕えたいと思っていたようだが……」
「そうなんですね。息子さんも帰らないのですか」
「いや、それが最近無事がわかってネ。来週には戻ってくるそうですヨ」
一樹が生きて帰ってくる。それだけで珠子の心に光明が差す気がした。
会えなくてもいい。しかし、一目見たいと思った。
「シスターは毎日いらっしゃるのですか?お住まいはどこなのです?」
珠子の質問に神父は不思議そうな顔をしたが「彼女は戦災孤児を面倒見ている『友の家』に住んでいます。毎日夕方にここで祈って帰りマスヨ」と答えた。
「そうですか。どうもありがとうございました」
立ち上がり礼をのべ珠子は教会を出た。空を見上げると真上に月が上っていてあたりを明るく照らしている。
今日は多くの出来事があった。疲労困憊の身体と心を引きずりながら、珠子は誰もいない空っぽの家に帰ることにした。