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色絵
第12章 桜
屋敷に行かず、別れも告げずに先生の元から去って、何回もこの季節を迎えた。
ワタシは何故、あの日で最後にしたのか…
一番許せなかったのは何だったのか…
しばらくしてから考えることができるようになった。
沙絵さんの体にあった痕。愛の印…
ワタシが欲しくても貰えない印…
先生の赤ちゃんを欲しいと堂々と言えること。
性癖や、先生が本当に愛してるのは誰だったのかということより、
ワタシが出来ないことが出来る沙絵さんに敗北したのだ。
体は何度も疼き先生を欲しがった。
でも理性がそれを抑えた。
春…またこの季節が訪れる。お屋敷の塀にある絵は毎月代わり、先生が元気なことを知らせてくれる。
想い出のある花々が描かれ、それがワタシに戻ってきて欲しいというメッセージに思えた。
今年の桜の絵は一風変わっていた。
裸の桜の枝と散り落ちる最後の花びらが描かれていた。
本当は散り始めから、少しずつ葉が出始めて、花が終わると一気に新緑に変わるものなのに、
絵の桜は葉がなく、花が終わり、裸なのだ。
先生と沙絵さんに何かあったのだろうか。