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縣男爵の憂鬱 〜 暁の星と月 番外編〜
第1章 縣男爵の憂鬱
礼也は暁の家の玄関を出た。
下町なので、玄関に車寄せの広さはない。
暫く歩いたところに車を待たせてある。
礼也はふっと深く息を吐く。
「…私は何しに来たんだ…」
先ほどの場面を回想する。
…私が折角感動的にキメたのに…!
礼也は苦々しく思い出す。
はらはらと涙を流す暁を、慰めようと手を伸ばした礼也より一足先に月城が暁を抱き締める。
「…おい‼︎」
「暁様、こうして縣様のお許しを頂けました」
「…うん、月城…」
「…暁様、これからは永遠に一緒です」
「…うん、約束だよ…?」
「…約束いたします。…愛しています、暁様…」
「…僕もだ、月城…愛している…」
…二人の美しい貌が近づき、唇が合わさりそうになる。
礼也はすっかり叫び慣れた言葉を叫んだ。
「こらこらこらこら‼︎待て待て待て待て‼︎」
…全く…月城があんなにふてぶてしい奴だとは思わなかった…!
礼也は忌々しそうに思い返す。
月城は、礼也のお墨付きを得たとばかりに、あからさまに暁にベタベタとしだし、礼也が止めなかったらキス以上のことを平気でしそうなくらいに人目をはばからない溺愛ぶりだったのだ。
もはや二人だけの愛の世界を傍観しているのが馬鹿馬鹿しくなり、礼也は部屋を出て来たのだ。
「…本当に…私は何しに来たのだ…!」
憤懣やるかたなしといった風に独り言ちる礼也の背後から、声がかかる。
「兄さん‼︎」
振り返ると、暁が駆け寄って来る。
「…暁…」
暁は礼也に強く抱きつく。
「兄さん!…ありがとう!…許してくれて…ありがとう…!」
「…暁…」
暁はぎゅっと礼也にしがみつき、離さない。
「…兄さん…大好きです…。僕は兄さんの弟で良かった…!大好き…大好き…兄さん!」
…かつて少年の頃、ずっと礼也の後を追いかけ、帰りを待ちわびていた暁そのままであった。
礼也は暁の異国の花のような芳しい薫りを嗅ぎながら、優しく抱き締める。
「…私もだ。お前が大好きだよ…ずっと…」
抱き締める暁の背中越しに、やや憮然と隠しきれない妬心を露わにして、こちらを見つめる月城の端正な貌があった。
礼也はにやりと笑うと、月城に見せびらかすように暁を強く抱き締め、その艶やかな髪にキスをした。
下町なので、玄関に車寄せの広さはない。
暫く歩いたところに車を待たせてある。
礼也はふっと深く息を吐く。
「…私は何しに来たんだ…」
先ほどの場面を回想する。
…私が折角感動的にキメたのに…!
礼也は苦々しく思い出す。
はらはらと涙を流す暁を、慰めようと手を伸ばした礼也より一足先に月城が暁を抱き締める。
「…おい‼︎」
「暁様、こうして縣様のお許しを頂けました」
「…うん、月城…」
「…暁様、これからは永遠に一緒です」
「…うん、約束だよ…?」
「…約束いたします。…愛しています、暁様…」
「…僕もだ、月城…愛している…」
…二人の美しい貌が近づき、唇が合わさりそうになる。
礼也はすっかり叫び慣れた言葉を叫んだ。
「こらこらこらこら‼︎待て待て待て待て‼︎」
…全く…月城があんなにふてぶてしい奴だとは思わなかった…!
礼也は忌々しそうに思い返す。
月城は、礼也のお墨付きを得たとばかりに、あからさまに暁にベタベタとしだし、礼也が止めなかったらキス以上のことを平気でしそうなくらいに人目をはばからない溺愛ぶりだったのだ。
もはや二人だけの愛の世界を傍観しているのが馬鹿馬鹿しくなり、礼也は部屋を出て来たのだ。
「…本当に…私は何しに来たのだ…!」
憤懣やるかたなしといった風に独り言ちる礼也の背後から、声がかかる。
「兄さん‼︎」
振り返ると、暁が駆け寄って来る。
「…暁…」
暁は礼也に強く抱きつく。
「兄さん!…ありがとう!…許してくれて…ありがとう…!」
「…暁…」
暁はぎゅっと礼也にしがみつき、離さない。
「…兄さん…大好きです…。僕は兄さんの弟で良かった…!大好き…大好き…兄さん!」
…かつて少年の頃、ずっと礼也の後を追いかけ、帰りを待ちわびていた暁そのままであった。
礼也は暁の異国の花のような芳しい薫りを嗅ぎながら、優しく抱き締める。
「…私もだ。お前が大好きだよ…ずっと…」
抱き締める暁の背中越しに、やや憮然と隠しきれない妬心を露わにして、こちらを見つめる月城の端正な貌があった。
礼也はにやりと笑うと、月城に見せびらかすように暁を強く抱き締め、その艶やかな髪にキスをした。