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隠密の華
第11章 十
――あれから一年が経ち、私は水虎国の妃として過ごしていた。一年間戦もなく、平和だった。まるで私の周りで起こっている出来事が、全て夢ではないかと思う程。
「胡蝶、おはよう」
「……おはよう、白夜」
「今日の事だが、俺は朝武術の訓練があって行かなければいけない。後の事は桐に頼んであるからな」
「分かりました」
ぼんやりとしながら寝台から起き上がり、寝台の側に立っている白夜と会話をする。
……今日は白夜と私が夫婦になって一年の祝賀行事が、国で開かれる。
私は正午に白夜と一緒に、民達へ挨拶しなければいけない。
その前に義父義母へ挨拶し、行事の為に用意された特別な衣装へ着替えなければ……。
「じゃあ、行ってくるぞ」
「ええ。行ってらっしゃい」
扉の方へ歩いていく白夜へ微笑むと、私は白夜と入れ違いで入ってきた桐へ視線を向けた。
「いつまで寝てんだよ、胡蝶」
「様を付けろ。桐犬」
「誰が犬だ!お前妃になったからって、調子乗んなよ!」
相変わらず不機嫌そうに睨み付けてくる桐へ、私も睨み返すと、また桐が吠える。