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隠密の華
第11章 十
そのまま頭を撫でられた瞬間、桐の体温を感じながら分かった。
……やはり、私は桐の事が。
この気持ちは、誰とも比べ物にならない。
私の心を揺れ動かすのは桐だけ。
心に居座るのも桐しかいない。
こんなこと口が避けても言えないが――
「都、俺は覚悟出来てる。お前といれるなら、処刑されても良い。都は?」
「私は……」
「俺とここから逃げて、俺の側にいてくれねーか?」
「それは……」
頭を撫でていた手が離され真剣な声が鼓膜に届くと、私は鼓動を速めたまま口ごもる。
……どうしたら良い。私が逃げれば、国がまた戦になるかもしれない。漸く平和になったのに。駄目だ。戦だけは。子供達の未来を奪うことだけは……。
「桐」
「何だ?都」
ぎゅっと太腿の横で両拳を握り締めながら、私は桐へ頼んだ。
「抱いて欲しい。桐から」
……最後に。そうすれば、私もこの気持ちを胸に秘めて生きていける。桐へ告げないまま、胸にしまえる。