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隠密の華
第14章 十三
逃げて良いと言われても、どうやって逃げれば……。
「お前は気付かないのか?この牢、鍵など掛かっておらん」
「えっ?鍵が!?そんな筈は……!」
設樂様から言われ、慌てて牢の扉を確認する。
……本当だ。鍵、掛かってない。
でも何故……。
「白夜は都の気持ちを確かめる為に牢へ入れたのだろう。逃げずに自分の元へ戻ってくると信じたいのだ」
「白夜が私の気持ちを……?」
扉に触れる手が、一瞬震えた。
私は桐が好きだ。
だけど、白夜からも愛されて、無償の愛というものを知った。
たった一年。
短い時間なのだろうが、私にとっては情を抱く時間には十分過ぎた。
今更白夜を捨てられるのか?
偽りだとしても、夫。
あんなに愛してくれた白夜を裏切るのか?