この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠密の華
第16章 十五
「都、この密命引き受けてくれるな?」
「設樂様……しかし……」
妾など、また王子から抱かれたりするのではないか?
「……」
「都」
「……」
戸惑ったまま黙り込んでいる私へ向かい、設樂様は優しく名前を呼ぶ。
しかし――
「御意……」
私が呟くと、その瞳が冷たく濁った気がした。
……もう一人の女として生きていけると思っていたが、そうでもなさそうだ。
まさか、こんなことになるとは。
呆然としながら、設樂様の低い声が耳に残った。
「都は隠密。誰のものにもならない――」