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**情画**
第5章 梟
「実、おかしくはないけれど、ずいぶん難しいほうから描いたのね。」
「だって、こうやったら、ビュンと葉っぱ生えてるのが見えたんだもの。
横にしたら、ぺらぺらで描くの難しいよ。」
鉛筆の下書きは、何度も消して書き直した跡があった。
横から書いて薄い葉を描いたもの。
今の構図で無理矢理、葉の大きさを変えたもの。
「先生は見たとおりを描けばいいって…
僕、色塗りできなかったから、宿題になっちゃったんだ。」
「そう、でも実が見えたとおりで良かったのよ。
色塗りしましょ。」
「うん。でも朝顔ないよ。」
「じゃあおうちの朝顔見てみましょうか。」
ワタシは庭の鉢植えを取りにいった。
実の絵は、もちろん子供が描いたもので、拙い鉛筆書きではあったものの、
構図を捉える力、捻れたり浮いている立体を表現しようと懸命に描かれたものであった。
「ふふっ、いつか先生に見ていただいて教えていただけたらいいのに…」
ワタシは朝顔に呟き実のところに戻った。
「ママも描いてみようかしら…」
「やだよ〜、僕下手だから描けなくなっちゃう。」
「実は下手じゃないよ。見たとおりをちゃんと描けるんだよ。」