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終止符.
第2章 綻び(ほころび)
次の日、奈緒は沙耶とイタリアンレストランでのランチを楽しみ、新しくオープンしたショッピングモールへと足を運んだ。

梅雨の晴れ間の土曜日は、どこへ行っても混雑していて、目的のショップを探しただけで、買い物を断念した。

歩き疲れ、コーヒーショップで一息つく。

「あぁ、人混みは疲れるよね。」

沙耶がため息をつきながらカフェオレを口にする。

「そうだね、ここもたくさんの人が並んで待ってるわ。」

「…ホントだ。よかった座れて。」

ざわめく店内で、近くに座っていた女子高生達の声が響く。

「ほら、あの人がいるよ。」

「やっぱ3時からバイトなんだ。超ラッキー。」

「忙しそうだね。」

「ヤバい、めっちゃカッコイイんですけど。」

興奮気味に話す彼女達の視線の先に目をやると、カウンターの中で、こちらに背を向けコーヒーをカップに注ぐ店員が見える。

「きっと彼の事だね。さっきまでいなかったよ。」

沙耶が言う。

「ふーん、そうだっけ。」

気のない返事をしながら奈緒はコーヒーを飲む。

「あれ?あの子」

「ん?」

「奈緒、あの子だよ。」

「誰?」

「ほら、昨日ファミレスで隣にいたさわやか青年の…えぇっと…たしか…純だ!」

沙耶の声が思ったよりも大きく響き、ざわめきが一瞬途切れた。

奈緒が人差し指を口にあて、それを見た沙耶が自分の口を手で抑える。

ざわめきが戻る。

純と目が合う。

昨夜と同じようにハッとした様子でこちらに気がつくと、軽く会釈をしながら照れるように笑った。

「あ、笑った。純だって。」

「やったね。名前ゲット。」

女子高生達が口々に言い、嬉しそうに顔を見合わせている。

「あの子どう?」

「えっ?」

「奈緒に興味がありそう。」

「やめてよ、子供じゃないの。」

「そんな事ないわよ、彼素敵よ。私なら遊んであげてもいいけどな。」

「私はパス。」

「たまには男が必要よ。」

「あはは。そうだけどね。」

女子高生が帰った後のテーブルを拭きに、純が近付いてきた。

「ここでバイトしてるんだ。」

沙耶が話しかける。

「はい。あ、味はどうですか?」

「美味しいよ。」

「よかった~。ありがとうございます。立花さんはどうですか?」

「…えっ?」

「コーヒーの味。」


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