この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
終止符.
第2章 綻び(ほころび)
「あなた、出掛けるんでしょう?」

「………」

「もういいかしら、家に入りたいの。」

「奈緒さん。」

「変な声で刺激して悪かったわ、壁が薄いのね。これからは気をつけます。」

「………」

「おやすみなさい。」

「奈緒さん。」

奈緒は、振り返りながら見つめる純に構わず、鍵をあけて家に入った。


真っ直ぐに向き合う眼だった。

自分がどこかに置き忘れてきた眼差しだった。


「不倫、か…」

人に指摘されると、その言葉が重く心にのし掛かる。

正しい道だけを歩んでいたあの頃。

人の過ちを、簡単に非難できたあの頃。

真っ直ぐな純の眼差しが、いつまでも心に張り付いて奈緒を責めた。

「なにも分かってないくせに。」

ファミレスで純に聞かれていた会話を思い出しながら、自分の生活が嘘の上に成り立っているという事を改めて確認し、言い訳を考える。

世の中に、本当の事なんてあるのだろうか?

愛し合っているのだから、誰も傷つけないのだから、お互い大人なのだから。

篠崎に逢いたい。

本当の事はここにあると言って欲しい。

自分で決める終わりの時を、人に左右されるのは嫌だ。


いつの間にか降りだした雨の音に気付いた時、メールの着信を告げるバイブの音が短く鳴った。

『お疲れー。
もう寝たかな?

今日ゆっくり見れなかったショップに明日行かない?

また純のとこでお茶しない?』

いやな予感がした。

この先、なにかのきっかけで、純が篠崎との秘密を、沙耶に洩らすような事になったら……。

『ごめんね。
明日は予定があるの。また誘ってね。

今日は楽しかったね。
おやすみ。』

奈緒は嘘をついた。

『了解でーす。
千秋が行けそうだから、明日は千秋と二人で行ってきます。

それじゃ、おやすみ。』

さらに不安が広がる。

細心の注意をはらって今まで過ごしてきた。

後ろめたさを感じながらも、仲間を大切に思ってきた。

小さな綻びが少しずつ広がり、隠せなくなる前になんとかしなければ。

奈緒は眠れない夜を、雨音を聞きながら過ごした。

買って来たファッション誌のモデル達が、奈緒を見て笑っていた。



/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ