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終止符.
第16章 愛しい人
「懐かしいでしょう。」

「えぇ…」

「あぁ、やっと僕の奈緒さんが帰って来た。」


純が少し目を潤ませながら奈緒を見つめた。

奈緒は恥ずかしくなって俯いた。


何度も行き来した階段を手を引かれながら上がり、純がいた部屋を通り過ぎる。

奈緒が毎日開けていた部屋の鍵を純が開けた。


「おかえりなさい奈緒さん…さあ、中にどうぞ。」


純がドアを開きながらうやうやしく一礼して中へと招き入れる姿に、奈緒は可笑しくなり「クルシュウナイ。」と言いながら足を踏み入れた。


キッチンの明かりは消えていたが、リビングの方からちらちらと点滅する光が見える。


「奈緒さん、靴を脱いだらそのままリビングに行って下さい。」

「はい。」


奈緒は言われた通り靴を脱ぎ、キッチンを通り過ぎてリビングを覗いた。

「………」


奈緒の目の前に、純の背丈程もあるクリスマスツリーが現れた。

キラキラ光るボールや金色のリボン、星形のオーナメントがきれいに飾り付けられ、イルミネーションの点滅がツリーを美しく浮かび上がらせていた。


「きれい…」


奈緒は見とれながらそう言った。


「クリスマスにはいつも奈緒さんがいたらなぁ、って思いながら飾ってました。」

「………」


純は奈緒の横を通ってツリーに近付き、手を伸ばしていくつかの飾りを外して持ってきた。


「奈緒さん、手を出して下さい。」


奈緒が両手を胸の前に出した。


「えーっと…、これが3年前のプレゼント…」


奈緒の手のひらに小さな紙袋が乗せられた。


「これが2年前、こっちが去年のやつです。」


更に二つが乗せられた。

「…あ、今年のプレゼントは、僕のポケット…」


「純っ…ぅ…うぅっ…」


奈緒は泣き出した。
一人でツリーを飾る純の姿が目に浮かぶ。


「奈緒さん…」

「純…ごめんね、ごめんね…一人ぼっちにしちゃって…ホントにホントに、ごめんなさい…うぅっ…」


奈緒はプレゼントを落とさないように気をつけながら泣いた。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を純がティッシュで何度も拭いた。


「必要な時間でしたよ。…僕にとっても、愛子さん達にとっても…だから、これでいいんです。…奈緒さんが戻ってきたから僕は幸せです。」


純はそう言って奈緒を優しく抱きしめた。


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