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幸せの欠片
第6章 特別室
 翌日の月曜日、夫が出勤してから、一週間のスケジュールを考えた。

 主婦は時間が自由になるとは言っても、家にいることが前提で家のシステムが成り立っているから、いないとなると、そのように時間を組み直さねばならなかった。

 洗濯と買い物や銀行などに立ち寄る用事を考えて、スポーツジムに行くのにいい時間帯を決めた。

 やはり、ダイエットが終わるまで、お菓子作りやお料理教室はお休みをした方がいいだろう。一日に二つも予定が重なって、家事に支障を来たしてはいけないと思う。

 出来ればスポーツジムには、朝、毎日同じ時間帯に出掛けたいと思っていたのだが、厳しい。
 
 結局、午前中に家事を片付けて、午後から出掛けることになった。

 少し気が重いのは、エステや痩身美容のサロンと違って、自分で動かなければならないことだった。

 でも、夫と親し気に話をしていた櫂を思い出すと、上手に出来なくても励ましてくれそうな気がした。

 予約した時間より少し前に到着すると、櫂がエレベーター前のラウンジで待っていてくれた。


「こんにちは、麻衣さん」

「こんにちは、あの……、よろしくお願い致します」

「こちらこそ」


 櫂が優しく微笑んでくれたので、ホッとした。


「ご主人が特別室をご予約になったので、実は、この下のフロアまで移動しなくちゃいけないんです」

「はい・・・・・・」

「特別室は、防音設備が整っていますし、豪華できれいなお部屋ですよ」


 豪華できれいはともかく、防音が必要かどうかと思ったが、特に質問はしなかった。



  4階でエレベーターを降りて、まっすぐに伸びる廊下を見ていると、まるでホテルか、マンションのようだった。


「特別室って、いくつあるんですか?」

「3部屋あります」

「この階は、なんだか別の施設みたいですね」

「はい、ここは、別の組織の管理になっています」

「そうですか。でも3部屋を管理なさるのなら、水元さんは、とてもお忙しいですね」

「いいえ、全て私が担当するわけではないですし、特別室ではアシスタントも付きますから・・・・・・」

「なるほど・・・・・・」

「はい、では、こちらのお部屋にどうぞ」
 
「ありがとうございます」


 なぜかひどく緊張してしまった気持ちを解きほぐすのに、もう少し会話がしたかった。
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