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甘美な吸血〜貴方の餌になりたい〜
第2章 満月の夜に
「瞳を閉じていろ。その間、お前に至福の時間を与えてやろう!」
彼の低い声が私の鼓膜をくすぐるから、私は素直にコクンと頷く。
声も素敵!
どうしよう、私。
ドキドキが止まらないよ…。
彼のスーツをギュッと握って、瞳を閉じ、彼の腕に身を任せると、彼が私の耳に唇を寄せた。
「いい子だ。」
甘く甘く囁かれたその言葉に、私は体が熱くなるのを感じていた。
でも…
この夜の出来事は、ここを最後に私の記憶には残っていない。
あれから、私はどうなったのか。
次の日、自分のベッドで普通に目覚めた私には、不思議な事に、彼との記憶がここまでしか残っていなかったのだ。
なんとなく残る首筋の違和感だけを感じるだけで、他には何もいつもと変わらない朝だった。