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行こうぜ、相棒
第7章 No One Is To Blame
爽やかに晴れ渡った梅雨の晴れ間。月曜日の午前9時。
誰もいない5レーンの25メートルプール。
そのセンターレーンを、紫色のシャープな水着を着たエリが泳いでゆく。
必要以上に飛沫(しぶき)を立てず、鏡のように静まる水面を、滑らかに泳いでゆく。
腰の位置から静かに水上に出た右手が優雅に宙に半円を描き、頭の先で水面に没してゆく。左手が同様の動きをくりかえす間、彼女の体は確実に前に進む。
左手で水をかく時、二回に一回の割合で顔を半分だけ水から出ししっかりと呼気を行う。吸気は意識しなくても身体が自然に行ってくれる。
5階建てビルの最上階にあるこのジムのプールは、可動式の屋根を解放し、直射日光を入れている。
日差しはプールの中ほどを横切るように、斜めに差し込んでいた。
その、日差しの差し込む水の中に、エリは泳ぎ入る。途端に、自分の影が青く塗装されたプールの底に映った。すこし歪みながら、プールの底で“もうひとりの自分”が端正なクロールを続けている。
その影は、エリにリエのことを思い出させる。