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行こうぜ、相棒
第7章 No One Is To Blame
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「不思議なオファーだと思ったよ」と、先生は言った。
「性行為なしで、ただ縛るだけなんて」
箸の先でちくわぶを切り分けながらいったその言葉に、エリは黙っていた。
「どうだった? そんな風に縛られて」
「不思議な気持ちでした…」と、エリは言う「先生が、本気じゃなかったからかな?」
「本気じゃない?」
「だって、私のこと、そんな目で見てませんでしたよね?」
「M女を責めるような目?」
エリは頷いて、目の前にあった猪口を手に取った。
目の前ではボウタイをきりりと締めたバァテンダーが、菜箸でおでん鍋からロールキャベツを取り出していた。摘(つま)まれたロールキャベツから、金色のだし汁が流れる。若緑のキャベツに、ピンク色のベーコンを下に敷いて、白い干瓢が腰帯のように巻かれている。
バァテンダーは、小皿に乗せたロールキャベツを、エリに目配せで手渡した。
「それは、きみがそういうことを望んでいるわけではなかったからだよ。ちがうかな?」
ロールキャベツの湯気が、エリのまえに立ちのぼる。おでんだしでやさしく煮込まれた、ロールキャベツのいい匂いがした。
「ええ」とエリは答える。