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花菱落つ
第3章 信玄
「わっはっは。そうか、求婚してしまったか」
「厚顔の至りにございます」
「まあ、あの容姿ではまさか少年とは思うまいて」
「は」
信玄はようやく笑いをおさめた。近頃は嫡男義信の件など頭を悩ませることが多く、久々に笑ったような気がする。
「ところで急なことになるが、そなたには武藤の家に養子に入ってもらいたいのじゃが」
「私にですか」
「うむ。そなたが甲府を発ってすぐ、嫡男の与次が急逝してしまってな。武藤家には他に男子がおらぬゆえ、誰かを養子にせねば家が絶えてしまうでのう」
「光栄至極に存じます」
武藤家は信玄の母方の親類筋にあたる家だった。単なる国人衆の三男である源五郎にとっては、かなり破格の申し出と言ってよいだろう。
「このあとすぐさま元服し名を改めた後、武藤の家に入ってもらうことになる。この信玄からの手向けとして、三条の侍女の一人をそなたの嫁にくれてやろう。色々忙しくなるが、済まぬの」
「いえ。もったいないことに存じます」
信玄は降って沸いた急な話に、狐につままれたような顔の源五郎を手を振って下がらせたのだった。
「厚顔の至りにございます」
「まあ、あの容姿ではまさか少年とは思うまいて」
「は」
信玄はようやく笑いをおさめた。近頃は嫡男義信の件など頭を悩ませることが多く、久々に笑ったような気がする。
「ところで急なことになるが、そなたには武藤の家に養子に入ってもらいたいのじゃが」
「私にですか」
「うむ。そなたが甲府を発ってすぐ、嫡男の与次が急逝してしまってな。武藤家には他に男子がおらぬゆえ、誰かを養子にせねば家が絶えてしまうでのう」
「光栄至極に存じます」
武藤家は信玄の母方の親類筋にあたる家だった。単なる国人衆の三男である源五郎にとっては、かなり破格の申し出と言ってよいだろう。
「このあとすぐさま元服し名を改めた後、武藤の家に入ってもらうことになる。この信玄からの手向けとして、三条の侍女の一人をそなたの嫁にくれてやろう。色々忙しくなるが、済まぬの」
「いえ。もったいないことに存じます」
信玄は降って沸いた急な話に、狐につままれたような顔の源五郎を手を振って下がらせたのだった。