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花菱落つ
第8章 東光寺
義信が東光寺に幽閉され二年近くの時が過ぎた。
臨済宗妙心寺派の法蓋山東光寺は同派に帰依する信玄によって再興された寺院だった。また同寺はかつて信玄の側室諏訪御料人の父、諏訪頼重を幽閉し自害に追い込んだといういわくつきの寺でもある。そのような寺に義信を幽閉した理由はわからない。だが二年もの間、信玄は初めから義信などいなかったかのように振る舞い、義信は放っておかれた。廃嫡はしたものの、実の息子には違いない義信の翻意を願っていたのかもしれない。
だが、いつまでも義信を東光寺に放置したままでいる訳にもいかなくなった。
駿河攻めの日が近づいていた。
臨済宗妙心寺派の法蓋山東光寺は同派に帰依する信玄によって再興された寺院だった。また同寺はかつて信玄の側室諏訪御料人の父、諏訪頼重を幽閉し自害に追い込んだといういわくつきの寺でもある。そのような寺に義信を幽閉した理由はわからない。だが二年もの間、信玄は初めから義信などいなかったかのように振る舞い、義信は放っておかれた。廃嫡はしたものの、実の息子には違いない義信の翻意を願っていたのかもしれない。
だが、いつまでも義信を東光寺に放置したままでいる訳にもいかなくなった。
駿河攻めの日が近づいていた。