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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
「そういえばさ――」
「ん?」
「“あの時”だって、キスだけはしなかったよね。それ以上のことしてるのに、どうして?」
「そ、それは……イチイチ言わなくても、なんとなくわかるだろ!」
黒木は僅か頬を染めながら、怒ったように言い放った。
零子や紺野の視線に晒されたあの場において、微かになにかを秘めておきたかった――黒木にしてみれば、そういうことだったのかもしれない。
そんな意図をおそらくはサラも察して、ややしみじみとして言う。
「私たちって、いろいろ順番が滅茶苦茶だったから、戸惑うのはわかる」
「まあ……な」
「でも、私ね――俊くんと一緒だったから、今こうして素直な心でいられるんだって――そう、思ってるんだ」
サラは明るくそう言って、自然と黒木の手を握り締めた。
「だからこれからも、私と一緒にいてくれる?」
「サラ……」
「ダメ、かな?」
そう言って少し目を伏せた更に、黒木が言う。
「バーカ。今更、不安そうな面すんなって」
「だって……」
そうして瞳を揺らすサラを前に、髪を掻き舌打ちをした黒木が――
「じゃあ……目をつむれよ」
その刹那、サラは――
「ん……」
重ねられた唇が、思いのほか優しいと感じているのだった。