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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
※ ※
アパートから学校まで通うのに用いている路線の半ば。普段なら通過するだけのその駅で、サラは初めて電車を降りた。
駅周辺のオフィス街を抜けると、スマホを片手に細い路地に入る。
所々に飲食店が軒を連ねるが、その多くは居酒屋やバー或いはスナックだ。夜にはサラリーマンで栄えるであろう通りも、まだ陽の高い午後二時には軒先も閉ざされひっそりと静か――。
そんな眺めを横目に更に歩を進めたサラは、路地を抜けた先でくたびれた雰囲気が漂う歪な形の雑居ビルを目にし、その前で足を止めた。
「えっと……ここなの、かなぁ?」
スマホで位置情報を取得し、其処が目指して来た場所であることを確認する。
建物の周辺に、やや怪しげな雰囲気が漂って見える。だが、サラは表情を緊張で強張らせながらも、そのビルに足を踏み入れた。
エレベーターの前の狭い無人のエントランスで、入居しているテナントの案内を見る――と。
「あ、あった。【Onlooker】は――5Fか」
それは昨日、偶然訪れたウェブサイトに冠されていた言葉と同じ。それが企業名であるのか、はたまた何らかの店舗名であるのか、それすらもまだ不明だった。
しかし、そこはかとなく興味を抱いてしまったサラは、サイト上の問い合わせフォームから自分が仕事を探しているという旨を先方に伝えている。
すると「え、もう?」と思うくらいに素早いタイミングで、返信のメールが送られてきたのだ。