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あなたの胸の中で眠る花
第5章 ♦︎曖昧な恋心*

部屋に戻り、一条さんに弁当を渡そうと思ったが、まだ留守だった。仕方ない。ドアノブにかけておくのは心が嫌がったから、冷蔵庫に入れといて後で渡すことにした。


まだ残っていた部屋の片付けを心は着々と済ます。休んでていいと言われたので、俺はテレビを見ながらたまにスマホをいじる。

ようやく片付け終わった心が、サーモンピンクの袋を悩んだ様子で持っている。俺はその様子を観察する。
迷った結果、クローゼットの隅にこっそりと置いた。


「……それ、飾らないの?」

心は俺の問いかけに戸惑う。そしてゆっくり口角を上げると寂しそうに言った。

「うん….見ると帰りたくなっちゃうから」

帰りたいのは施設?それとも…

「一人暮らしに慣れてきたら、飾ろうと思って」
「そっか…」

自立するために、高校に入ってすぐバイトを始めた心。そのお金もほとんど引越し資金にあてていた。

俺から見たら、心はすでに自立しているように見えていた。土日はずっとバイトをしてたし、施設にいる年下の子の面倒もよく見ていた。

でもまだ十八歳。自信を持って大人といえる年じゃない。
俺たちは、人生の大半を施設で過ごした。親が必要な年頃に親はいなくて、赤の他人と暮らす日々。嫌になった時期もあった。喧嘩もした。たくさん泣いた。そして、たくさん笑った。

一緒に住んでいたら、もうそれが家族だった。

誰でも居心地の良い場所は離れたくない。
でも、それじゃ前に進めない。

心の揺れ動く気持ちに同情した。


心はクローゼットを閉めて、俺の隣に座る。ひょこっとこちらの顔を覗きこんで笑う。

「真ちゃんて、写真撮るときいつも変な顔するよね。ふふ」
「なんだよ、急に」
「別にー」
「こういう顔なんだよ」

お互い、さっきの空気を誤魔化すようにふざけて笑う。
これでいいんだ。




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