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人魚島
第3章 説教
馬鹿馬鹿しい僕はテレビを大音量にして視聴した。
それでも奥からは煙草やら精液やら愛液やら汗やらのイヤらしい臭いが立ち込めていた。
『あんあんイクイク』は相変わらず激しさを益々増す一方でやかましい。
僕は咲子と背中合わせに座ってクイズ番組の再放送を睨んでいた。
『よっしゃ、風呂入るで、三咲行くぞ』
『はいはい』
ようやく終わったのか、トランクス姿の橘さんとバスタオルを身体に巻いただけの三咲さんが居間にやって来て『坊主、待っとけや』と洗面所にドカドカ入って行く。
静まり返った居間の座敷、咲子が不意に『昼飯はパーラー末次案内するけん』と麦茶を持って来てくれた。
しばらく二人で麦茶を楽しみ、テレビを大音量で視聴した。
『はぁ、生き返ったけん、三咲、煙草吸おうや』
頭にフェイスタオルを乗せ黒いジャンプスーツ姿の橘さんがドカッと卓袱台の前に胡座をかいた。
『今夜は牛舎の雌牛が朝から苦しげに産気付いたけん、出産の手伝いじゃ、さっき陣痛和らげる注射打ったけん、落ち着いてる』
橘さんが赤丸を吸い出しながらニヤニヤ告げる。
灰皿にトントンと灰を叩き落としながら『でな、お前らはな』と早速早々に説教を開始する。
『テクニックなら、俺が教えるけんな安心しろや』
『アンタ孝はテクニシャンじゃけん』
三咲さんもピアニシモを燻らせながらニヤニヤする。
日に何回肌を重ねて愛し合えば気が済むのだろう。
『三咲が孕む迄や、ピル止めろや』
見透かした様にニヤリと言う。
僕は押し黙ってしまった。
咲子がハンドクリームで潤った左手を僕の右手に然り気無く卓袱台の下で重ねて来たので、僕はギュッとした。
『で、お前らは欲望だけなんか?それとも好いて好かれてなんか?』
『え?』
顔を不意に上げ、不安になり咲子を見下ろせば咲子は僅かに唇を尖らせながら顔を紅潮させている。
『惚れ合ってる仲なんやろ?じゃけん、何処行くにも手繋ぎデート気分なんじゃろ?』
そうなのだろうか?
僕は順子を差し置いて咲子に夢中だ。
恋と言っても過言では無い。
恋は盲目だけれど、間違い無く僕は咲子にゾッコン夢中だった。
『じゃけんな、人前ではあんましイチャイチャすんな?漁師ども、殊更若い男衆は殺気立っとるけん、咲子なんざ夜道でマワされちまう、ピヨピヨ鳴る携帯ベルは持たせとんのか?』
橘さんが三咲さんに振り返る。
それでも奥からは煙草やら精液やら愛液やら汗やらのイヤらしい臭いが立ち込めていた。
『あんあんイクイク』は相変わらず激しさを益々増す一方でやかましい。
僕は咲子と背中合わせに座ってクイズ番組の再放送を睨んでいた。
『よっしゃ、風呂入るで、三咲行くぞ』
『はいはい』
ようやく終わったのか、トランクス姿の橘さんとバスタオルを身体に巻いただけの三咲さんが居間にやって来て『坊主、待っとけや』と洗面所にドカドカ入って行く。
静まり返った居間の座敷、咲子が不意に『昼飯はパーラー末次案内するけん』と麦茶を持って来てくれた。
しばらく二人で麦茶を楽しみ、テレビを大音量で視聴した。
『はぁ、生き返ったけん、三咲、煙草吸おうや』
頭にフェイスタオルを乗せ黒いジャンプスーツ姿の橘さんがドカッと卓袱台の前に胡座をかいた。
『今夜は牛舎の雌牛が朝から苦しげに産気付いたけん、出産の手伝いじゃ、さっき陣痛和らげる注射打ったけん、落ち着いてる』
橘さんが赤丸を吸い出しながらニヤニヤ告げる。
灰皿にトントンと灰を叩き落としながら『でな、お前らはな』と早速早々に説教を開始する。
『テクニックなら、俺が教えるけんな安心しろや』
『アンタ孝はテクニシャンじゃけん』
三咲さんもピアニシモを燻らせながらニヤニヤする。
日に何回肌を重ねて愛し合えば気が済むのだろう。
『三咲が孕む迄や、ピル止めろや』
見透かした様にニヤリと言う。
僕は押し黙ってしまった。
咲子がハンドクリームで潤った左手を僕の右手に然り気無く卓袱台の下で重ねて来たので、僕はギュッとした。
『で、お前らは欲望だけなんか?それとも好いて好かれてなんか?』
『え?』
顔を不意に上げ、不安になり咲子を見下ろせば咲子は僅かに唇を尖らせながら顔を紅潮させている。
『惚れ合ってる仲なんやろ?じゃけん、何処行くにも手繋ぎデート気分なんじゃろ?』
そうなのだろうか?
僕は順子を差し置いて咲子に夢中だ。
恋と言っても過言では無い。
恋は盲目だけれど、間違い無く僕は咲子にゾッコン夢中だった。
『じゃけんな、人前ではあんましイチャイチャすんな?漁師ども、殊更若い男衆は殺気立っとるけん、咲子なんざ夜道でマワされちまう、ピヨピヨ鳴る携帯ベルは持たせとんのか?』
橘さんが三咲さんに振り返る。