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貴方だけに溺れたい
第3章 屈辱と悪夢
それは春先の出来事だった。
野田家で飲み会が行われるようになって3ヶ月が過ぎた頃、葵はその日、酷い生理痛に耐えながら宴会の準備をし、多代が部屋を出た後は鎮痛剤を飲みベッドで横になっていた。
それ以前からその男__竹村は部屋に顔を出してはいたが、話す内容といえば『今日もお邪魔してるよ』『一人で寂しくない?』『一緒に飲めばいいのに』という極めて普通の態度だった為に、葵自身も"鬱陶しい"と感じる程度で然程の警戒もしていなかったのだ。
どちらかといえば、何かとちょっかいを出してくる元ヤン達の方がストレスではあったが、彼らは人前で"悪ふざけ"はするが、竹村と同様に部屋にまで来る事は無かった。
その頃の葵自身にも現在ほどの警戒心は無かったのだが、自分の住む部屋で、しかも義両親や夫が居る家の中で、自分が襲われるなんて事を考えるだろうか。
その時の葵自身は、何も考えてはいなかった。
宴会が終わったら後片付けをしなくては……。
それだけの事を考えながら、いつの間にか眠っていたのだ。
竹村が部屋にまで入って来るなんて事も考えてはいなかった。
大概の人間は扉をノックしても返事が無ければ、引き返すだろう。
用事があったり異変を感じれば、智之や義両親に言うのが当たり前だとさえ思っていた。
それに葵にとって、その頃の竹村という存在は"無害"であり"舅よりも少し若い普通のおじさん"でしかなかったのだ。
そんな竹村が何を目的として部屋に入って来たのかは、実際のところ分からない。
ただ、いつの間にか眠っていた葵を目覚めさせたのは、布団の上から身体全体に這い上がろうとする奇妙な動きを伴う重みと、耳元で繰り返される荒々しく酒臭い息遣いだった。
はじめは智之だと思った。
飲み会が終わり、酔っ払った智之が性欲にでも駆られて乗っかって来たのだろうと思っていたのだ。
しかし起き上がろうとして顔を上げた葵が見たものは、夫では無く、薄暗闇でギラギラと目を光らせている竹村の、鬼のような形相だった___。