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貴方だけに溺れたい
第5章 枷
とにかく、早く終わらせてしまおう……。
「………もっと……」
「なに?」
「もっと気持ちよくして……あげようか……?」
緩慢な律動が繰り返される中、葵は智之の顔を見上げながら妖しくそう囁いていた。
手を外した口許には微かな笑み。
意味を察した智之が「乗りたいの?」と言い終わるよりも先に、葵は身体を起こし、その汗ばんだ肉体を押し倒していた。
智之の絶頂なんて、待っていられない。
AVの真似事みたいな無駄口を叩くくせに持久力が無くて。
本能のまま激しく腰を振りながらも、直ぐに息が上がってしまって続かない。
そんな智之のペースに合わせていたら、葵はずっとこの妄想から抜け出せないと思ったのだ。
「まったく淫乱だなぁ、葵は……」
何を言われても構わない。
たとえ想像でも、森川の存在を性の対象にしてしまう罪悪感に比べれば、智之の"AVごっこ"に付き合う方がまだマシなのだ。
「こういうの、久し振りでしょ?」
智之の上に跨がり、自分の中に沈むそれに意識を集中しながらゆっくりと腰を動かし始める。
手は彼の腹部に軽く置き、その両腕の間に綺麗な膨らみ取り戻した胸を挟む。
「うん」と応えながらその胸に手を伸ばす智之にとっては、葵のその体勢は理想的なほど"エロい光景"に見えていただろう。
「ッツ……あ……」
しかし葵にとっては闘いだった。
腕の間で揺れる豊かな胸を激しく揉みしだかれ、その先端に与えられる刺激に応えながらも、ちらちらと浮かんでは消えるその存在を必死に振り払おうとしていたのだ。
少しでも気を抜けば、現れてしまう。
智之の手が森川の節張った大きな手に変わり、彼の指先に乳首を摘ままれてると思うだけで、全身が跳ね上がるほどの快感が走り抜ける。
感度が違った。
森川を思うだけで、身体にも心にも、ぞくぞくとするような昂りが何度も繰り返して押し寄せてくるのだ。
「あ……ヤバいって……そんなに激しくしたら……」
「……ック……アッ……」
どうかしてる……。
けれど反面では、このまま彼の妄想に溺れていたいと願う、疚しい欲望にも気付いているのだ……。