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貴方だけに溺れたい
第5章  枷

「あ、あおいっ……もう駄目だっ……イキそ……イキそう……」
「あっ…アッ………」

やがて智之の絶頂が近付くと、葵は更に激しくその律動を強めていった。

もうすぐ終わる。
その予感にも間違いは無い。

堪えるように眉を寄せ、切迫した喘ぎ声を漏らす。
葵の身体をまさぐる彼の手付きは、徐々に広がり押し寄せてくる脈動の波にもがく動きそのものだった。

余裕を失った智之は葵の胸を鷲掴みにし、その形が歪むほど強く乱暴に揉みしだく。
そして忙しなく腰や太股を撫で回した後には、彼女の律動を急かすように尻を掴み、欲望のままに激しく揺らし始める。

「ッツ……あっ…アッ……あ」

その動きに快感は感じなかった。
ただ此方の意思など構う事も無く、まるで物のように身体を弄られ、陰部を擦り付けられてる感覚は、自分がダッチワイフのような扱いを受けているような苛立ちを覚えさせる。

しかし葵はそんな屈辱感から目を逸らし、智之の熱情に合わせながら小さな喘ぎ声を漏らし、突き上げられる快感に悶えるように背中を反らす。
そして自らも欲情を示すように腰を擦り付け、夫の絶頂を煽り続けた。

もう嫌だ。早く終わって。

思う事それしか無い。
けれど消すに消せない幻影を振り切る為に、敢えて激しく乱れているようなものだった。

なぜなら、やっぱり考えたらいけないと思うから。
いくら快楽に溺れたいと願っていても、やはり葵は、疚しい自分には負けたくは無かった。

想像の中だけでも、森川に抱かれていたい。
あの逞しく引き締まった身体で抱き締められながら、めちゃくちゃに淫れて、溶かされてしまいたい。

けれど葵はどうしても、自分の中にある森川の人間性を汚したくは無かった。

たとえそれが想像や虚像であっても、自分のような愚かな人間の捌け口にはしたく無かったのだ……。



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