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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第4章 新生─甦る─

それから2年も経たないうちに、大口取引先の訴訟問題に絡んで多大な損害を被ることになった『澁谷化学』は、会社更生法を適用されることなく、その歴史に幕を閉じることになった。
それはついこの間のことのようだ。
弱り目に祟り目で、社長が不慮の死を遂げたのは精算業務に忙しいときのこと。
西沢はその社葬に出席している。生前社長にお世話になったお礼に、せめて最後の挨拶くらいしておきたかったから。
そこで皆の目を惹いたのは、頽(くずお)れそうな社長夫人である母親を支えて、入り口で健気に頭を下げていた怜悧な少年。
悲しみを必死に堪えて、人々に丁寧なお礼を述べる。
芯の強さをあらわすような澄んだ瞳。母親似の美麗な顔立ちが印象的だった。

