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第9章 未練

　図らずも、ジュチと宗俊は同じことを考えたのだ。このときの丞相の脳裡をよぎった想いをついに賢は知ることはなかった。つまりは、実際に膝を突き合わせて話してみて、この老練な政治家は賢の人柄や器を高く評価したのである。








　元国皇帝を外祖父に、皇女を生母に持つ元王太子はこれまで何かと元国寄りの人間だと考えられていた。賢自身が言ったように、賢の身体を流れる半分の血のせいで、賢は反元派の廷臣たちからは敵視された。高麗の朝廷では、賢があたかも自分たちを支配下に置こうとする元皇帝の手先であるように見なされたのだ。