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この前、人を拾いました
第84章 ⑨—6 甘いささやきにはご注意を



ひんやりとした廊下に一人佇む。


「あぁ…いやだいやだ…」




小さく呟いて、滲んだ涙を拭く。



レイと結婚する覚悟も


レイと別れる覚悟も


どっちも出来ない私は、一体、どうしたらいいのだろうか。



どうしようもない想いを抱えていると、突然、居間と廊下をつなぐ扉が開いて、私はハッと息をのんだ。






「…大丈夫ですか……?」


「…ハッ…はいっ……。今そっちに戻ろうと思ってて」


「みきさん───…」



突然現れた総一は、俯く私の両手を握った。


思わず顔を上げたら、また、真剣な眼差しを向けられていて、胸がトクンと鳴る。


本当、総一さんて、綺麗な顔立ちだな…


なんて、呑気なふりをしていないと、引き込まれそうになってしまう。



「……もう…礼二には懲りたでしょ?」




トクンっ───…


また心臓が大きく鳴る。


ごまかすようにして、ハハと笑いながら私は目線を外した。

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