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この前、人を拾いました
第85章 ⑨—7 誰のお蔭で
「こいつは、本当、小さいときから自由奔放でね……」
小さいレイが走り回っているのが、目に浮かぶ。
「総一みたいな落ち着きもないし…礼儀もなっちゃあいないし…」
総一という名前が出て、頭を下げたままのレイの身体に力が入るのが分かった。
「なのに、何かやらせるとすぐ出来るようになってしまうような嫌な子でした」
そうそう。
「そのくせ、飽きっぽいから、物事に本気になったこともない…本当にどうしようもない息子でした。でもね……」
そう言いながら、西園寺代表は私の方に顔を向ける。
突然のことに、私は少しだけ後ずさった。
「さきさんへの気持ちは本気です。親父だから見ていれば分かる…」
にこりと微笑まれて、私は顔が熱くなるのを感じた。
なんて素敵な言葉だろう……
名前さえ合っていれば、私は泣いていたに違いない──…
お父さんに向き直った西園寺代表は言葉を続ける。
「礼二には、母がいません。礼二を産んだのと同時に病でこの世を去りました」
ふと、レイの誕生日のことを思い出した。
初めてみたレイの涙。
あんなに苦しかったことも、
───────僕、生まれてきて、よかった…
あんなに嬉しかったこともない……