この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
この前、人を拾いました
第89章 ⑩—2 雑誌と検査薬と、それからわたし
「……勘違いだったみたい…ははは…」
ゆっくりとレイの事を見たら、ふぅ…と息をついていた。
そして
「よかった」
と小さな声で呟くと、再びうっ…と呻いてトイレにダッシュしてしまった。
レイの吐いている声を聞きながら、私は呆然としていた。
え……?
いま、レイ、
良かったって…言った……?
それってどういう意味……?
軽く動揺している私の胸がチクリと痛む。
──────────二人だなっ!!!
オーストラリアで、プロポーズされたとき、レイがそう言っていたのを思い出した。
こんなにすぐっていう予定ではなかったけど、でもいつか、子どもを持つことは当たり前のことだと思っていた。
なのに、妊娠してないって分かって、良かったって……
いやいや、レイの言うことを気にして、いつも後で肩すかしをくらうんだ……。
そう言い聞かす。
そして、私は痛む胸に気付かないふりをしながら、先ほど買った育児本をそっとゴミ箱に捨てた。