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喝采
第2章 コーヒー・カンタータ
オペラタウン近くの住宅街でひっそりと営業する喫茶店「ツィンマーマン」。
「……ツィンマーマン?」
ドアプレートに刻まれたドイツ語を読んだ雫石は怪訝な顔をした。
「そ。マスターがバッハ好きでさ。『コーヒー・カンタータ』から取ったらしい」
「なるほど」
「ツィンマーマン」はバッハの世俗カンタータ「おしゃべりはやめて、お静かに」が初演された喫茶店の名前だった。コーヒーを讚美する内容と初演の場所から、一般的には「コーヒー・カンタータ」と呼ばれている。
谷田部はためらいなく少々年季の入った扉を開けた。店内にいたマスターがにこやかに声をかけてくる。
「いらっしゃい。しばらくぶりですね。今日はどちらで?」
「オペラタウンの方」
マスターは谷田部の職業を知っていた。ここ「喫茶ウィーン」はオペラタウンに程近く、またテーブル、カウンターともに全席禁煙で喉に悪影響を及ぼすこともない。そのため歌手仲間では知る人ぞ知る店だった。
「……ツィンマーマン?」
ドアプレートに刻まれたドイツ語を読んだ雫石は怪訝な顔をした。
「そ。マスターがバッハ好きでさ。『コーヒー・カンタータ』から取ったらしい」
「なるほど」
「ツィンマーマン」はバッハの世俗カンタータ「おしゃべりはやめて、お静かに」が初演された喫茶店の名前だった。コーヒーを讚美する内容と初演の場所から、一般的には「コーヒー・カンタータ」と呼ばれている。
谷田部はためらいなく少々年季の入った扉を開けた。店内にいたマスターがにこやかに声をかけてくる。
「いらっしゃい。しばらくぶりですね。今日はどちらで?」
「オペラタウンの方」
マスターは谷田部の職業を知っていた。ここ「喫茶ウィーン」はオペラタウンに程近く、またテーブル、カウンターともに全席禁煙で喉に悪影響を及ぼすこともない。そのため歌手仲間では知る人ぞ知る店だった。