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第4章 の

俺のその言葉に、由布子さんも嬉しそうに笑った後
もう一度バッグの中を探して

小さい小さい包みを取り出した。

由布子さんは無言でその包みをじっと見つめて
「ココで待ってて」
そう言って波打ち際まで歩いて行く。

今まで吹いていた海風が止まった。
風が止むとほんの少し寒さが和らいだ。

風が止んだな―――

由布子さんは波のぎりぎりまで歩いて行って
大きくその包みを海の方に投げ入れた。

その後ろ姿は
夕陽の逆光で神々しくさえ見えた。

ふと見ると、逆光で暗くなった由布子さんの後姿に
小さく光るものがまとわりついて・・・

「蛍？」

まさか。
この時期に、ましてや海に蛍がいるはずない。

自分の思いついた考えをすぐに否定する。

なぜその光を瞬時に『蛍』だと思ったのか
後からいくら考えても分からなかったけど
その時は何も疑わずに一瞬、蛍なのか？と思いこんだ。

こっちに歩いて来る由布子さんはスッキリとした顔で夕日を背にした。


風が・・・吹き始める。

俺は無意識に由布子さんに語りかけた。


「ナツ」


その時、急に陸風が吹いた。

思わず言ったその言葉に俺自身が驚愕した。

「博之？」



夕凪が―――終わった。