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蛍の想ひ人
第5章 想

「また連絡するよ。チョコありがとう。嬉しかったよ」
そう言って車を発進させて、しばらく走った道路で路肩に止める。
「くそっ!」
やり場のない怒りと悲しみを
罪のないハンドルにぶつけた。
一瞬、パァーっと大きなクラクションが鳴って
俺はハンドルに突っ伏した。
由布子さんは悪くない。
俺が悪いんだ。
由布子さんに兄貴を思い出させる「ナツ」というフレーズをなぜ出してしまったのか。
いまだに分からない。
「くそっ」
俺は、兄貴の年齢を越した今でさえ
兄貴を超えられずにいる。
今、ココにいない兄貴の残像に全てを持って行かれる。
由布子さんの心は、兄貴にある。
「イヤな男だったら良かったのに。なぁ兄貴」
兄貴は俺の憧れで、自慢で・・・
そして1番嫌いなオトコだ。
嘘だ。
嫌いになんかなれるはずがない
兄貴のせいじゃない。
俺がふがいないからいけないんだ。
薄氷の上を2人で歩いて
氷が割れた湖に俺だけハマってもがき苦しんでいる。
いや、湖だと思った底は泥沼だったか。
そして、そんな俺を見ている由布子さんも苦しんでいるはずだ。
由布子さん、俺、泥にまみれて息が出来ないよ。
そう言って車を発進させて、しばらく走った道路で路肩に止める。
「くそっ!」
やり場のない怒りと悲しみを
罪のないハンドルにぶつけた。
一瞬、パァーっと大きなクラクションが鳴って
俺はハンドルに突っ伏した。
由布子さんは悪くない。
俺が悪いんだ。
由布子さんに兄貴を思い出させる「ナツ」というフレーズをなぜ出してしまったのか。
いまだに分からない。
「くそっ」
俺は、兄貴の年齢を越した今でさえ
兄貴を超えられずにいる。
今、ココにいない兄貴の残像に全てを持って行かれる。
由布子さんの心は、兄貴にある。
「イヤな男だったら良かったのに。なぁ兄貴」
兄貴は俺の憧れで、自慢で・・・
そして1番嫌いなオトコだ。
嘘だ。
嫌いになんかなれるはずがない
兄貴のせいじゃない。
俺がふがいないからいけないんだ。
薄氷の上を2人で歩いて
氷が割れた湖に俺だけハマってもがき苦しんでいる。
いや、湖だと思った底は泥沼だったか。
そして、そんな俺を見ている由布子さんも苦しんでいるはずだ。
由布子さん、俺、泥にまみれて息が出来ないよ。

