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第6章 ひ

軽く酔った頭で、顔を離して彼女の表情を確かめると
俺の知らない吉村ちゃんが真剣な笑顔で俺を見つめる。

「ひとりの女に執着しているつまらない男だぞ」
「それでも良いって言ったら？」

いつもとは違う、真剣なその瞳にビックリしていると
ジャケットの裾を思い切り引っ張られ
軽くイラっと来て後ろを振り向けば
なぜかそこに由布子さんがいた。

「由布子さん？」

あの海の日から1ヶ月が経とうとしていた。

明らかに怒っているその顔も可愛いよ。

なんてのんきに思っている場合じゃなくて
俺は吉村ちゃんの腰をしっかりと抱いていたし
吉村ちゃんは俺の肩に手をかけていた。

「え・・・と、何でここにいるのかな？」

「いちゃいけない訳？」
「いや、そーゆー訳じゃなくて・・・」
「何かやましいことでもあるの？その女性と！」

「え！」
そこで俺は慌てて彼女の腰に回していた手を宙に放った。

「この人が、加賀くんの本気のひと？」

吉村ちゃんは離れようとしても俺の肩に回した手を放してくれなくて
その上、由布子さんに挑発するような事を言った。

「あなたは？」
由布子さんも珍しく機嫌が悪くて

「私？私は加賀くんに本気の女、かな？」

いやいやいや、ちょっと待て。
俺もさっきそれを聞いたんだって

本当にちょっと待て。