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雪の日に祝福を・・・。
第9章 絵画コンクール
「っ・・・」
作業部屋に向かいキャンバスを見ると自然と涙があふれ出した。胸が熱くなって帰りたくなる。
〝我が家〟に縁遠い身の上には、強烈だった。
「あれ、月依さん。帰ったの?」
玄関の靴で気分が華やぐ。
「月依さん。完成したお祝いを・・・」
姿を探し歩き作業場で立ち尽くしているのを見付け後ろから抱きしめる。
「お帰り。」
「ただいま・・・」
回された腕を握る。
「どう?力作だよ。」
「素敵。懐かしく感じた。」
「ありがとう。」
「入賞できるわ。」
「明日、出しに行って来るよ。」
「ええ。ところでテーマは、なに?」
「いつかこんな家に住みたい。」
「私も、よ・・・」
胸が高鳴った。稲穂の波に佇む家。そんな柔らかな空間に住んでみたい。
「決めた!」
「え?」
振り向いた彼女に両頬に手を添えられた。