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籠鳥 ~溺愛~
第4章     

「鏡哉さん、チャコールグレーのスーツ、出しときますね」

 美冬は気にせず鏡哉のウォーキングクローゼットの中に入り、てきぱきと着替えの用意をしていく。

 すると観念したのか鏡哉もウォーキングクローゼットの中に入ってきた。

 とても広いのでこの中で着替えることができるのだ。

 鏡哉は憮然としながら着ていた薄手のニットを脱ぎ、上半身裸になる。

 美冬はなるべく見ないように目を伏せて、鏡哉に選んだドレスシャツを渡す。

「着せて」

 頭上から降ってきた言葉に、美冬は思わず顔を上げる。

 すると適度に筋肉の付いた鏡哉の胸が目の前にあり、一気に体温が上昇した。

「な、何言ってるんですか!」

「……着せてくれないと、行かない」

「ええっ!?」

(我儘大王ですか、あなたはっ!!)

「バ、バカなこと言ってないで、早く着てくださいぃ!」

「本気だって。いいの? このままじゃこの部屋から出してあげないし、高柳も時間が迫って困ると思うんだけど」

 鏡哉はそんな勝手な言い分で、美冬にシャツを押し付ける。

(むちゃくちゃだ、この人!)

 しかし言い出したら引かない鏡哉の我の強さを知っている美冬は、早々に降参してなるべく目を伏せながらシャツを鏡哉の腕に通し始めた。

「ほ、ほらボタン留めますから、上向いててください」

 鏡哉が美冬を食い入るように見つめているので、着せにくい。

「ん」

 言われた通り鏡哉は顎を上げたので、上からボタンを留めていく。

 緊張で指先が震えてなかなか留まらない。

「ふ、可愛い、美冬ちゃん」

「もう! 黙っててください!」

 なんとかボタンを留め終えて、ネクタイを結ぼうとする。しかし――。

「ああ、やり方わからないか」

 鏡哉はそう言うと楽しそうに美冬の両手をとってネクタイの結び方を教えていく。

(もう、自分で結べばいいのに……)

 やっとネクタイから解放されて、棚からスラックスを取り鏡哉に手渡す。

 さすがに下は無理だと判断した鏡哉が、後ろを向いた美冬の前で着替えた。

 衣擦れの音と、かちゃかちゃというベルトの音が部屋に響く。

(ああ、何やってるの、私ったらこんなところで)

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