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籠鳥 ~溺愛~
第15章
キッチンに入り冷蔵庫から、シャンパンのハーフボトルを取り出す。
シャンパングラスを持ってリビングへ移動すると、外は雨が降っていた。
ガラス戸を開けると、すこしむっとした夏の空気が体を撫でる。
ベランダに出て鉄製のベンチに腰を下ろすと、ポンと音を立ててシャンパンを開栓しグラスに注ぐ。
しとしとと降り続く雨音を肴にグラスを傾けると、自然と気持ちが落ち着いた。
子供の頃から繰り返し見る夢。
その正体が何かも解っている。
頭で考えても仕方のないこと、そんな事は人生の中で往々にしてある。
ただ最近は見ていなかったので、少し疲れただけだ。
背凭れに体を預け、暫し眼を閉じる。
しとしと。
雨音の控え目な音が鼓膜を揺らす。
酔いが回ったのだろうか、頭の隅が少しぼうとする。
一つ大きく息をした時、背中から暖かい何かに包まれた。
長い黒髪がさらさらと鏡哉の頬に触れる。
「……美冬?」
首に回された華奢な腕にそっと手を添え、その名を呼ぶ。
「お酒、飲んでるのですか?」
美冬は抱きついたまま、小さな声で尋ねてくる。
「ああ」
グラスを持っていないほうの手で美冬の手を解くと、隣に座るよう促す。
しかし美冬は鏡哉から離れ、ベンチの隅に座った。
「なんで離れて座る?」
「だって」
美冬はその赤い唇を尖らせる。
「鏡哉さん酔ってるとき、ちょっといじわるだから」
「……そう?」
確かに酔っている時はいつもより少し執拗に美冬をからかったり、抱いたりしているような気がする。
鏡哉は気にしないで美冬の肩を抱き寄せた。
「飲む?」
シャンパンのグラスを差し出すと、美冬は恐る恐る受け取る。
シュワシュワと音を立てて注いでやり「飲むのは泡だけね」と釘を刺すと、美冬は「子ども扱いしないでください!」と可愛らしく頬を膨らませた。
美冬はグラスに口を付け、こくりと飲み下す。
「美味しい?」
「う〜〜ん、ちょっと苦いですが、美味しい……かな?」
首を傾げそう言った美冬はもう一度口を付け、ぐびと飲む。
「飲み過ぎるなよ」
鏡哉は自分が高校の時から酒を飲んでいたのであまり強く美冬を止めることもできず、一応注意しておく。