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王家の婚礼(くすくす姫後日談・その2)
第4章 婚礼当夜

「疲れた?」
「いや。」
婚礼の夜、スグリ姫と婚約者は、姫の部屋で寛いでおりました。
ハンダマ王太子とレンブ姫の婚礼が無事に執り行われ、スグリ姫の婚約のお披露目も無事に終わって、二人はほっとしておりました。
お互い、疲れたとは思っていませんでしたが、口数がいつもより少なくなっているのは、自分たちが思うよりは疲れている、ということなのかもしれません。
「月が出てないから、星が綺麗」
「月?」
自分にぴったりくっついて座っているスグリ姫が、窓の外を見て呟いたことに、サクナはぼんやり相槌を打ちました。
「婚礼は、月の無い日にすることが多いの。これから満ちていくように、って」
「ああ、なるほど」
「あと、もうひとつ…二人が初めて過ごす夜が、静かなように」
「…なるほどな。」
軽く口づけを交わした後、スグリ姫は自分が手を置いた、サクナの腰の横の辺りの感触が他とは違うことに気がつきました。
「ここ、どうしたの?」
触った感じだけでなく、薄明かりに目を凝らすと、肌が引きつれているのが分かります。
「ん?…ああ。ガキの頃、木から落ちてザックリやった跡だ」
「ザックリ!?…痛かったでしょ?」
「忘れたな」
スグリ姫はそこを手のひらで撫で、なんとなく口づけました。
「…なんだか、星みたいね。」
「あ、こら!」
「え?」
星のような傷跡を指先で撫でながら、ちゅっと口づけていた姫は、サクナの言葉で、いま触れている場所のすぐ傍が、二人を覆っている上掛けの下で、むくりと動いたのに気付きました。
「…あ。」
「お前は…そういう事する前に、よく考え…おい?!」
姫が古い傷跡から今動いた部分へと、触れる場所を変えようとしているのを見て、サクナは焦りました。
「何すんだ?!」
「…だめ?」
駄目かと聞いてはいますが、姫は既にそこに触れています。
「ダメ…じゃねぇが、」
「私、サクナが分かるの」
立ち上がりかけたものを、すり、と柔らかい手のひらで擦られて、サクナは低く唸りました。
「手も、腕も、背中も、胸も、唇も、舌も、全部、サクナだって、分かるの。他の人と間違えたりなんかできないくらい、触ったり、触られたら、ちゃんと分かるのよ?だから、」
姫の目が灯りを反射して、濡れたように煌きました。
「ここも、触らせて欲しいの。ちゃんと分かるように、なりたいの。」

