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遥かな友に
第1章 遥かな友に
名前を呼んで肩を叩き、軽く腕を引く。
「いや、俺はいいよ。十分楽しませてもらった」
団長は苦笑し、首を振る彼の両肩に手を置いた。
「四十年、一緒に歌ってきた仲間じゃないか」
病のため、以前より痩せてしまった、肩。両肩に置いた手に、グッと力をこめる。
「歌いたいんだよ、もう一度、お前と」
「ああ、そうだな。……わかった」
声に含まれた想いに、彼は腰を上げた。
ともに歌った仲間。
ともに歌った曲。
腕を引かれてゆっくりとステージに上がり、並んだ場所は一緒に歌っていたころの定位置。右も左もあのころと同じ団員で、変わっていない。
指揮者の腕が上がり、静かに下ろされた。
しっとりとした美しいハーモニーがホールを満たす。
演奏会の締めくくりにふさわしい、名演だった。
「いや、俺はいいよ。十分楽しませてもらった」
団長は苦笑し、首を振る彼の両肩に手を置いた。
「四十年、一緒に歌ってきた仲間じゃないか」
病のため、以前より痩せてしまった、肩。両肩に置いた手に、グッと力をこめる。
「歌いたいんだよ、もう一度、お前と」
「ああ、そうだな。……わかった」
声に含まれた想いに、彼は腰を上げた。
ともに歌った仲間。
ともに歌った曲。
腕を引かれてゆっくりとステージに上がり、並んだ場所は一緒に歌っていたころの定位置。右も左もあのころと同じ団員で、変わっていない。
指揮者の腕が上がり、静かに下ろされた。
しっとりとした美しいハーモニーがホールを満たす。
演奏会の締めくくりにふさわしい、名演だった。