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イかせ屋…
第8章 決別
「なら、私も債権は諦める。」
社長には何かとよくして貰った。
嫌なお客様が来て、会社の雰囲気が悪くなると必ずみんなでご飯を食べに行こうと言う社長が食事を奢ってくれる。
本当にサバサバとした社長だった。
でも、社長にも守りたい人がいるからと会社を倒産させる決意をした。
その気持ちが今の私には理解が出来る。
「杉田さん、債権を諦めて大丈夫なの?」
今度は私の心配をしてくれる植草君。
「うん、彼氏とは別れたし、ちょっとバイトをしてしばらくはのんびりと出来る立場だから、ゆっくりと次の職場探しが出来る身分なの。」
笑って植草君に今の自分を報告する。
顔がくしゃくしゃになるくらいに植草君は嬉しそうに笑う。
「今の杉田さんはフリーなんだ!?」
植草君の弾んだ声…。
前は飲みに行こうと言われもよほどでない限り雄君がいるからと断り続けた。
「そうよ。暇人なの。」
今はいくらでも誘ってアピールをしてしまう。
雄君のせいで私の携帯はほとんど鳴らなくなってる。
新しい自分はまた新しい友達を作って世界を広げたいとか思う。
「再就職だけど…、うちの会社。まだ人を募集中なんだよ。」
植草君が入った新しい会社は大手の旅行代理店…。
「本当に?」
「ああ…、俺の状況を聞いて、俺と同じくらいの年代の人なら何人か引き受けるって言ってくれてるから前の職場の人には順番に声を掛けてんだ。」
そんな話をしてる間に植草君が予約をしたというお店に到着する。
「ここ!?」
「ここ…、1度来たかったんだ。」
予約をしないと入れないフレンチレストラン。
「就職祝いにはぴったりだろ?」
植草君が笑ってお店の中に入ってく。
誰の就職祝いなのかよくわからない状況だけど植草君が行きたいというお店だから私も植草君の後について入る。
新しい就職先の希望も見えて来て、植草君との楽しい会話にフレンチレストランというお店だからか私は浮かれた気分になる。
今夜は新しい自分に乾杯しなきゃ!
過去の自分に完全な決別をして弾む心でそのフレンチレストランに入ってた。