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イかせ屋…
第9章 再会
落ち着いてて明るい空間を演出してるお洒落なお店。
「いらっしゃいませ…、ご予約ですね?」
「はい、2名で予約の植草です。」
「すぐにお席へご案内をします。」
手馴れたお店の人が席へと案内してくれる。
真っ白なテーブルクロスが敷かれた席で私の椅子をお店の人が引く。
「緊張しちゃう。」
昌さんがいつも私の椅子を引いてくれる人だった。
ああ…、またつまらない事を思い出す。
「俺も緊張するからやめてくれよ。」
冗談っぽく植草君が笑う。
老舗旅館の御曹司。
だから、こんなお店には慣れてる植草君…。
「植草君に緊張とか絶対にないはず。」
「あるよ?好きな女の子をデートに誘うとか絶対に緊張するだろ?」
デート…。
あの時の昌さんに緊張なんかなかった。
ダメよ、梓!過去は忘れなさい!
「新しい会社はどんな感じ?」
「まだ就職して4日目だからわかんねぇ。一応、新人祝いはしてくれたけれど、大手だから細かい業務が多いんだよ。」
小さな旅行代理店はツアーが限られてるし、手配をするバス会社なども決まってる。
大手はツアーの種類も多いし、同じツアーなのにお客様の希望するプランも様々だから、それを覚えるのが大変らしい。
そうやって楽しい会話をしながらの食事が始まる頃だった。
心臓を抉られる光景が私の目に映る。
黒っぽい着物を着た男性が同じように黒っぽい着物を着た女性をエスコートしてこのお店に入って来る。
そのカップルが私達が居るテーブルの横の通路を抜けてお店の奥へと移動をする。
甘い香りが漂う。
「何の匂い?」
植草君が不思議そうに通路を通り過ぎたカップルの背中を見てる。