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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春

「フロイトも分析なんてしないで、夢そのものをもっと楽しめば良かったのに…」
彼女の満足のいく会話ができず、更に今朝、余韻に任せて現実に処理してしまった僕は、居心地が悪くなって時計を見た。
(そろそろ戻らないと講義に間に合わないな。)
「次の講義は、さぼっても大丈夫よ。突然出欠とったりしないし、あの人学生が自分の講義聴いてるかなんて興味ないのよ。」
「何で知ってるの?」
僕と同じように、友人やサークルの先輩などの情報源を持たない彼女が、僕の知らないことを知ってるのは不思議だった。
「解るのよ。」
その返事もまた不思議だった。
謎だらけなのに疲れたのか、遠慮も警戒心も消えてしまったのか、僕は芝生にごろっとなった。
すると、驚くことに彼女も隣にごろっとなった。
「雲みたいね。私達…
確かにあるはずなのに、形も定まらず、流されている。
無いようでいて、光を遮り、雨をもたらす。」
もう気負うこともなく、
「そうだね。全くその通りだ。」
素直に彼女の言葉に応えた。
しばらく、その時の僕には意味のない話が続いた。

