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イかせ屋…2
第3章 その男、絶対的につき…
「ようこそ…、京都へ…。」
清太郎さんの爽やかな笑顔攻撃にクラクラする。
見とれてる場合じゃありません。
「初めまして、杉田 梓といいます。」
慌てて頭を下げる。
「そんなに気を使う事はないよ。本家の方には明日にでも来ればいい。今夜はゆっくりと京都の夜を楽しんで下さいね。」
清太郎さんは素敵な笑顔を一切崩す事なく個室から出て行った。
本家のイかせ屋…。
昌さんと同じ感覚がする。
女性には不愉快な思いをさせない完璧な紳士という感覚…。
「本家の方が居るのに何故昌さんがわざわざイかせ屋になったの?」
当たり前の質問をする。
「うーん…、その辺りの事は直接、清太郎さんから聞いた方がいい。」
私の質問に対して珍しく昌さんが微妙な表情のまま答えを濁す。
どうやら、その辺りに私が知りたい事が隠れてるとか考える。
もしかして、私はまた図々しく踏み込んではいけない部分に踏み込んでるのかしら?
それでも、何も知らないまま結婚して後で後悔するとかお断りだとも思う。
全てを理解した上でイかせ屋である昌さんを夫として受け入れる事が私に出来るのかしら?
いっぱい不安が押し寄せて来るから、その不安に押し潰されそうになって来る。
「梓…、大丈夫だ。本家でも梓には誰も嫌な事は絶対にしない。」
昌さんが私の肩を抱きしめる。
絶対的な安心感を私に与えてくれる昌さん。
昌さんが大丈夫と言うのなら、それは本当に大丈夫なのだと思う。
こういう部分では間違いなく信頼が出来る昌さん…。
「そろそろ、ホテルに帰ろう…。」
昌さんがそう言うから、その料亭を出た。
リムジンは静かな京都の夜の街を走る。
不思議の国へ来た私は、ちゃんと自分の帰りたい場所へ帰れるのかしら?
そんな、くだらない事を考える京都での最初の夜だった。