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イかせ屋…2
第4章 その男、弱い生き物につき…
その会社の名刺に昌さんの名前があり、肩書きは取締役代表となってる。
「母が創設した会社だからな…。」
昌さんは穏やかな笑顔になる。
「お母様が?」
なるほど…。
本社は確かに京都である。
「母の遺産は全て俺が受け継いだ。」
着物も会社もイかせ屋も…。
全てを昌さんが背負う決まり…。
その重さと戦う昌さんを私が支えられるようにならなければいけない。
とくにメンタルな部分は気を付けなくちゃ…。
そんな事を考える。
でも、この会社の話はプロポーズの前に聞きたかったとも思う。
今更、これを知ってから結婚したいとか言ったら私って財産目当てな女だと思われそう…。
「さてと、梓は京都なら何処に行きたい?」
凹む私に昌さんが聞いて来る。
やっぱり何があっても私が優先の昌さん。
清水寺も八坂神社も修学旅行で行ったし…。
心残りの場所といえば…。
「嵐山!」
「今からか?」
「無理なの?」
「いや、行けるけどな。なら、嵐山に行こう。」
そう言うと昌さんは湯豆腐屋さんを出てリムジンで嵐山へ向かう。
修学旅行の自由行動。
私は友達と嵐山を選んだ。
その日は関西に台風が接近中…。
文字通り嵐山は台風の影響で嵐の街だった。
雨と強風でボヤけた渡月橋。
河は増水して濁り、景色なんか全く見えない。
これ以上の観光は無理だとの判断でホテルに戻り缶詰にされる1日を過ごすという思い出だけが残る。
サスペンスドラマで有名な嵯峨野の竹林とか見たかったのに…。
それが修学旅行の心残りだったから、いつか大人になったら素敵な彼氏と京都へ旅行に来たいと願った。
前の彼氏じゃ、それは夢で終わる。
今は昌さんだから…。
その夢が叶うと思うとワクワクとかしちゃう。
「梓…、ご機嫌だな?」
頬にキス…。
「だって、昌さんと来たかった京都へ来たんだもん。」
彼に甘えて彼の腕に絡みつく。
私がご機嫌だと昌さんもご機嫌になる。
幸せな京都観光に胸が高鳴り、大好きな昌さんに甘えるだけの私だった。