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本の夢…
第10章 卒業
マンションは8階建て。
私の部屋は7階の角部屋。
1LDKの素敵な部屋。
リビングの壁には大きな本棚が付いている。
「気に入った?8階には家主さんが住んでいて、とても安心をして暮らせるマンションらしいのよ。」
叔母さんがそう言う。
「凄く素敵な部屋。でも…、家賃が高いでしょ?」
「その問題は多分解決するわ。」
叔母さんがその部屋を出て大学に向かって歩き出す。
3分ほど歩いた場所にモダンな喫茶店があった。
カウンターの中には白髪頭で白い口ひげを生やした初老の男性が居た。
テーブルが4つ。
その1つに叔母さんが座り
「コーヒーを2つ。」
とカウンターの中の人に注文をする。
「あのマスターが家主さんなの。」
叔母さんがクスクスと笑う。
スラリとしたスタイルの凄くいい素敵なマスター。
エプロンをした如何にも学生の女の子がコーヒーを持って来た。
「美味しい…。」
嫌な酸味や苦味がなく本当に香りが引き立つコーヒーだった。
「彼女が夢さんかな?」
いつの間にかマスターが私の横に立っていた。
「はじめまして…。」
マスターに頭を下げた。
「この喫茶店でバイトをしない?」
叔母さんが私に言う。
「バイトですか?」
マスターの顔を見た。
マスターが素敵な笑顔で笑った。
どこか懐かしさを感じさせるその笑顔に少しドキドキとする。
「実は、今のバイトの子が大学を卒業するから辞めちゃうんだよ。夢さんがバイトに来てくれるなら食事付きで家賃を格安にすると条件を出したんだ。」
穏やかで優しい声のマスター…。
「私がその辞めちゃう薄情なバイトです。でも、マスターの食事の味は保証をするし、このバイト先を知ったら辞めれなくなっちゃうバイト先よ。」
エプロンを付けた女の子が笑った。
家賃格安、食事付き。
その代わり、相場よりもバイト代は安くなるけれども大学に合わせて融通の利くバイトだから、この喫茶店のバイトの募集は毎年、私が通う大学で争いにまでなるらしい。