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本の夢…
第10章 卒業
大学が決定してから先生の素敵な笑顔をほとんど見ていない。
思い過ごし?
不安なまま、卒業式を無事に終えた。
早く帰って携帯で先生に連絡をしようとか思っていた。
「上垣さん…。」
担任の先生に呼び止められた。
「先生、色々とありがとうございました。」
大好きな先生だったから、きちんと頭を下げた。
「図書館の塚原先生にもお礼は言った?」
「まだです。」
「あら、大変…。早く言わないとダメよ。塚原先生は今期でこの学校を退職されるから…。」
嘘…。
そう思った。
先生が居なくなる?
そんな馬鹿な…。
だって先生は本の先生だよ。
私が目標としている本の先生だよ。
「なんで塚原先生が辞めるんですか!?」
思わず叫んでいた。
担任の先生が少し目を丸くする。
「一身上の都合としか聞いていないわ。」
先生の答えに
「図書館に行ってみます。失礼します。」
とだけ言うと図書館に向けて走り出した。
図書館の扉は固く閉ざされていた。
「先生!居ますか?先生!」
扉を叩いて叫ぶ。
「先生なら居ないわ。」
その声に向かって振り返ると佐川さんが居た。
「そんな…。」
一瞬、蹌踉めきそうになる。
「上垣さんも先生が好きだったの?」
佐川さんがギラギラとした目で私を見ている。
佐川さんは一般入試だからまだ大学が決まっていない。
佐川さんの顔からまだ彼女の苦しみが続いているのだとわかる。
「先生に…、お礼を言いたかったの。」
佐川さんに気を使ってそう言った。
「そう…、私は告白に来たの。だってもう学生じゃないもの…。学生じゃなければ先生がやっと私を見てくれるはずだから…。」
愛おしげに図書館の扉を佐川さんが撫でた。
彼女には悪いけれど私は先生を探すのが優先だった。