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きっかけは映画館
第28章 おうちで乾杯
「すげぇな…レストランみたいだ。」
「メインがパスタだから華やかに見えるだけだよ。それにヒジオが手伝ってくれたから、段取りよく出来上がったし…」
俺がしたのは、鶏のグリルの焼くのと、パスタを茹でるのと、キッシュとか言うやつの卵を混ぜるくらい。
「麻里絵ちゃんはお料理上手だ。」
と何度も誉めるけど…
『出来合いのものを上手く使ってるだけ…』
とか何とか言って認めない。
オードブルやサラダや…本当にパーティーのようだ。
そして、金曜日に大人買いしたチューハイでなくワインを開ける。
乾杯はスパークリングのロゼ…
ってワインもあと赤と白が控えてる。
「ねぇ、麻里絵ちゃん、乾杯したらお料理写メっていい?」
「いいけど、どうして?」
「感動したから…付き合い始めの記念に…」
「恥ずかしいから人には見せないでね。」
「もちろん、腹が減った時に見るかな。」
「余計お腹空いちゃうじゃない。」
「ははっ…じゃあ、写メみながらカップラーメンでも啜るかなぁ。」
「詫びしすぎる〜、毎日とは言えないけど、なるべく作って一緒に食べよう?」
「うん…やった。」
ああ、ソーシャルアドバイザーのヒジオにまんまと乗せられた…
ついつい、しょっちゅう作りにくるような言い方をしてしまった。
でもね、それが嬉しいと思える。
ヒジオと一緒に作るのも楽しかったし、とにかく苦にならないのだ。
好きだと自覚するまでは、好きなのか、嫌いなのか…
付き合うべきか、付き合うべきではないのか…
考えるのが辛くて、考えないようにして寝ていた。
きっとまだ、ヒジオの思いにはついていけていないだろうけど、
スルメのように一緒に居れば居るほど味が出るというか、ヒジオのよい所を発見し感動するのだ。
変な気を遣わなくても楽しいし、ヒジオは私を大事にしてくれる。
それだけで幸せなのだ。
「美味しい。」
ヒジオは料理を口にする度に言葉にしてくれる。
また、ヒジオの美味しいの為に作ろうと思うのだ。