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きっかけは映画館
第6章 エンディング
その後も場所を変え、体位を変えて数回のラブシーンが入る。
どれも際どい露出だったが、どこか美しさが残り、エッチ、エロいというより、エロスを感じた、という表現が合うと思った。
ただ、場内が暗くなると肘男は決まってスカートの中への侵入と、手への愛撫を再開する。
とうとう指を口に含まれて、一本一本愛撫されたが、スカートは捲る勇気はないのか、太ももの中腹までで戻っていく。
ただ手への愛撫が、太ももの奥に施された感覚に陥り、触れられてもいないのにショーツが湿っぽくなっているのに気づいていた。
場内が明るくなり、愛撫が収まると、肘男がどうしてこんなことをするのか、まるでカップルみたいじゃないかと、隣のカップルを盗み見れば、頬を寄せ合いキスをし始め、いやいや、肘男は痴漢だ、彼氏じゃない。
裕司は…裕司と一緒に見たら、どうだったのだろう。
人前でイチャイチャするなんて絶対にしない人だから、手も繋がないんだろうか…
ラブシーンの間、いたたまれない気持ちで見ているんじゃないだろうか…
そんなことを考えていたから、全くストーリーが頭に入って来なかった。
そして全くわからないまま、何故か女優がウェディングドレスを着て座っている。メイクやヘアメイクをしてもらってヴェールを被せられている。
扉を開けて入ってくる花婿姿の男優が優しい笑みで、
『綺麗だよ。』
ヴェールの上からそっと額に唇を寄せる。
そこでフェイドアウトしてエンディングロールが流れ始めた。
はぁあ〜
場内にため息や歓喜の声が溢れるが、ストーリーもわからず、肘男との攻防で終わった私には全く共感が湧かない。
エンディングからギュッと握られた手と肘男を睨んで、エンディングロールが終わる。
明るくなる前に手を振り切って出ていきたいところだが、隣のバカップルがイチャイチャして立ち上がる気配もない。
場内全体がそんな感じでラストにまた映像が流れるのを期待して動かないのだ。