- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館
ヒ…ジ…オ…
麻里絵ちゃんは俺の肩に頭を乗せたまま、とても小さな声で俺を呼ぶ。
振り向いてみると、麻里絵ちゃんから頬にチュッとキスがきた。
嘘だろ…?
あの恥ずかしがりやの麻里絵ちゃんからキスなんて…
びっくりして麻里絵ちゃんを見ると照れくさそうにニコッと笑ってる。
だから、反対の手で麻里絵ちゃんの手を握り、近い方の手で肩を抱いた。
麻里絵ちゃんは安心したように俺に体重を掛けてきて、顔を見合わせたあとスクリーンに視線を戻す。
スクリーンの中では男優が女優に愛撫している。
俺は肩に置いた手で麻里絵ちゃんの肩を撫でていた。
麻里絵ちゃんの指も人差し指で一本一本愛でていく、今、麻里絵ちゃんの一番側にいるのは俺だ。麻里絵ちゃんを一番愛しているのは俺だ。
そんな想いを指に託して…
麻里絵ちゃんはじっとして俺の愛撫を受け止めていた。
恋をしようと思って落ちるわけではない。
愛そうと思って愛しいと思うわけではない。
ただ、結婚は結婚したいと互いに思わなければ出来ない。
映画を見ながら益々、麻里絵ちゃんと結婚したいと思っていた。
麻里絵ちゃんはずっと俺の肩に頭を乗せたまま、映画を見ている。
もしかして眠っているのではないかと思うほど動かなかったが、指でくるくるするとピクリと動くので寝ていないとわかる。
映画が終わったら、まっすぐ家に帰るべきか、ゆっくりさっきのことを話し合うなら、外食も寄り道もせずに帰った方がいいだろう。