- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館
「ヒジオ…もういい…いっちゃうから…」
「ヒジオじゃなく久生ね。
それに女性は男と違って何度でもイケるんだから、遠慮しなくていいんだよ。」
酔っているせいか、名前で呼ぶよう話したせいか、はたまた、先ほどのバスルームでの仕返しか…
ヒジオは今までになく妖艶な笑みを浮かべ、大型犬のような手懐けやすさも消え失せ、男を見せてくる。
乱暴ではないものの、『麻里絵ちゃん』と言って私の言うことに従う気配もない。
だめっ…んんん…ヒサオ…
辛うじてヒジオと呼んだらもっと大変なことになるという計算は出来たが、なんと言っても聞いてくれる感じはない。
んんん…ゃあぁあ…
予測も出来ないままイカされて、ヒジオにはそれが想定内で、弛く優しく抱き締められながら果てを迎えてしまった。
はぁっ…はぁあっ…
息を継ぐ間もなくヒジオにしがみつく。
「ヒサオ〜ォ…」
ヒジオは嬉しそうに私を抱き締めてくれ、私も脱力したままヒジオに全てを委ねた。
「ヒサオ…」
「麻里絵っ」
もう放心状態でヒジオを呼べば、優しいキスの雨と共に名前を呼ばれる。
ぼぉっとヒジオを見上げている間に、お帽子は被せられていたらしい。
なのに、ヒジオはまた指と舌で、また私を果てに追いやろうとする。
「ヒサオ…もっ…来て…」
何とか言葉を紡ぐと、脚を担がれヒジオが覆い被さってきた。
んぁ…あぁあ…